
夜の球場に満ちる静寂。その中心で、一人の投手が、命を削る覚悟でマウンドに立っていました。
大リーグボール3号――星飛雄馬の右腕を蝕みながらも奇跡を呼ぶ魔球。
そして、その魔球を迎え撃つのは、かつての親友であり、今は父・星一徹と共に飛雄馬の前に立ちはだかる男、伴宙太。
親子の因縁、友情の決裂、野球に人生を懸けた者たちの想いが激しくぶつかり合う最終決戦。
『巨人の星』最終回は、果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか――。
物語の核心へ、ゆっくりと幕が上がります。
目次
巨人対中日戦、静かに火蓋が切られる
巨人対中日の一戦。そのマウンドに立つ星飛雄馬は、右腕の限界を承知の上で、大リーグボール3号による“完全試合”に挑んでいました。
そして彼の前に立ちはだかるのは、よりにもよって中日のコーチであり、父でもある星一徹。
死闘は続き、飛雄馬は一人の走者すら許さず、ついに九回、二アウトまで辿りつきます。
スタジアムの空気は凍りついたように重く、観客も、仲間も、ただ彼の投球を見守っていました。
伴宙太、運命のピンチヒッターに指名される
沈黙を破ったのは、一徹の指示でした。
呼ばれた名は――伴宙太。かつて飛雄馬と苦楽を共にした親友。
だが、今の伴は違います。
魔球攻略のために一徹と共に課されたトレーニングは、常軌を逸していた。長時間の逆立ち、バット3本の連続スイング…。
その代償として、伴の身体はすでに限界を超え、ただ立っているだけで震えが走るほどでした。
それでも、彼はバットを握り、バッターボックスへと歩を進めます。
飛雄馬対伴忠太、宿命の対決が始まる
対峙した二人。
飛雄馬は迷いを断ち切るように、大リーグボール3号のみで勝負に出ました。
一球目、ストライク。
だが続く三球はボールとなり、スタジアムはざわめき始めます。
心配した捕手・森がタイムをかけると、飛雄馬の口から驚愕の事実が語られました。
――伴は、大リーグボール3号を“見切っている”。
これまで魔球を打った打者は、いずれもスイングが遅い。
その癖を見抜いた一徹は、伴に徹底したトレーニングを課し、“選球眼だけで打ち崩す”戦術を仕上げていたのです。
そして――大リーグボール3号は撃ち返される
それでも飛雄馬は、逃げませんでした。
魔球への誇りを胸に、五球目を投じます。
伴のバットがしなり、鋭い打球が三塁線へと飛びます――ファール。
迎える、最後の一球。
観客の息が止まり、時が静止したかのような瞬間。
飛雄馬の渾身の大リーグボール3号。
そして伴の全身全霊のスイング。
結果――魔球は、打ち返されました。
その瞬間、飛雄馬の右腕は悲鳴を上げ、完全に壊れてしまいます。
星親子の戦い、静かに幕を閉じる
しかし、伴の身体はもう動けませんでした。
バッターボックスから一塁へ走る力すら残っておらず、判定はアウト。
飛雄馬は、ついに完全試合を達成しました。
スタジアムは歓声に包まれる。しかし、飛雄馬本人はマウンドに崩れ落ちたまま立ち上がりません。
一徹が歩み寄ります。
かつて息子を叱咤し続けた男が、今はただ静かに、飛雄馬の成長と勝利を称えました。
「…よくやった、飛雄馬」
そして、壊れた右腕の息子を背負い、親子はゆっくりとスタジアムを去っていきます。

上記2枚の写真はこちらからお借りしました。
この瞬間、長きにわたる星親子の戦いに、ついに終止符が打たれたのでした。
「巨人の星」のテレビ放送(全182回)
1968年3月30日 – 1971年9月18日