あなたは今、この画面を「見ている」と意識していますか?
実は私たちの脳は、目や耳から入ってくる膨大な情報を、無意識のうちに瞬時に処理しています。友人の顔を認識するのも、音楽を聴いているのも、すべて自動的に行なわれているのです。
ところが、この優秀な脳の情報処理システムが、時として私たちを「騙す」ことがあります。
その代表例が**「だまし絵」**です。
同じ大きさのはずの物が違って見えたり、静止画が動いて見えたり…。一体何故、こんな不思議な現象が起こるのでしょうか?
今回は、脳が騙される仕組みを、身近な例を使って分かりやすく解説していきます。
目次
【実験】同じ大きさなのに違って見える!だまし絵の不思議
目の前に1枚の絵があるとします。そこには長い廊下が描かれ、手前・中央・奥に3人の男性が立っています。
廊下には遠近感を出すため、床・壁・天井すべてに碁盤目状の升目(ますめ)が描かれています。

出典:https://jimmather.blogspot.com/
ここで驚きの事実: 絵の中の3人は、実はまったく同じ大きさに描かれているのです。
それなのに、私たちの目には「奥にいる人ほど背が高く見える」という錯覚が起こります。
定規で測れば同じサイズなのに、何故違って見えてしまうのでしょうか?
錯覚が起こる理由は「脳の過去の経験」にあった
脳は「見たまま」を処理していない
実は、人間の脳は目から入った情報をそのまま受け取っているわけではありません。
脳は常に、これまでの実体験や記憶をミックスして、目の前の状況を理解しようとします。
日常の経験が錯覚を生む
私たちは普段の生活で、こんな経験を何度もしています:
・遠くにいる人は小さく見える
・近くにいる人は大きく見える
・廊下の奥は狭く、手前は広く見える
・脳はこの「日常の法則」を自動的に適用します。
だから、だまし絵で「廊下の升目が奥に向かって狭くなっている」のを見ると、脳は無意識に「これは遠近感のある空間だ」と判断します。
錯覚のメカニズム
本来なら、遠くにいる人は小さく見えるはず。
でも、だまし絵では奥の人も手前の人と同じ大きさで描かれています。
すると脳は混乱して、こう結論づけます: 「同じ大きさに見えるということは、奥の人は実際にはもっと大きいに違いない!」
この脳の自動補正機能こそが、錯覚を生み出す正体なのです。
まとめ:脳は常に「予測」しながら世界を見ている

だまし絵の錯覚から分かるのは、私たちが「見ている」と思っているものは、実は脳が過去の経験をもとに再構築した世界だということです。
目はカメラのようにただ映像を記録しているのではなく、脳が積極的に情報を解釈し、意味を与えているのです。
この脳の働きは、普段は私たちの生活を助けてくれていますが、だまし絵のような特殊な状況では、面白い錯覚を生み出します。
次にだまし絵を見る機会があったら、ぜひ「今、自分の脳が騙されている!」と意識してみてください。きっと、いつもと違った楽しみ方ができるはずです。
