温室は、実は植物にとって「厳しい環境」だった?

温室

「温室育ち」と聞くと、甘やかして過保護(かほご)に育てられた子どもを連想(れんそう)します。
が、実際の温室は、意外にも植物にとって厳しい環境にあるようです。

温室は、実は植物にとって「厳しい環境」だった

その理由は、二酸化炭素不足です。
夜から朝にかけては、植物自身が二酸化炭素を出し、温室内部の二酸化炭素は500ppmを超えますが、光合成が始まると、あっという間に消費されて、300ppmまで下がってしまうのです。

通常の空気に含まれる二酸化炭素は350ppmで、この300ppmというのはそれよりも少ない数字です。
花も咲かなければ、葉も枯れてしまうほどの数値です。
風が弱いと、温室の窓を開けても、光合成ができない100ppmまで下がってしまうこともあります。

農家の人も、水や肥料の心配はしても、温室栽培において二酸化炭素が不足することなど思いもしなかったようです。

オイルショック以来、省エネのために温室の密閉度を上げたため、温室でつくった作物に障害が出始め、やっとその原因に思い至ったのです。

そして、試行錯誤(しこうさくご)の結果、二酸化炭素を2~8倍補給して作物を育てたところ、収穫量がぐっと増え、果実は甘みが増すことが分かりました。

日本では、冬のピーマン、トマト、キュウリ、メロンなどを、ヨーロッパでは野菜の他、カーネーションやバラなどの花を、この方法で栽培して収穫を上げています。

ちなみに、植物にとって望ましい二酸化炭素は、1500~3000ppm。
この数値を満たしていた石炭紀(古生代)の頃は、植物にとって、まさに理想的な環境だったといえます。

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