新しく建てられた劇場で行われる初めての公演を「こけら落とし」と呼びますが、この「こけら」とは一体何なのかご存知ですか？実は、私たちの身近にある「あるもの」が語源となっているのです。この記事では、「こけら」の正体から「こけら落とし」という言葉の由来まで、わかりやすく解説します。日本の伝統的な建築文化に根ざしたこの言葉の背景を知ることで、より深く理解できるでしょう。
こけら落としの「こけら」とは？
「こけら」というのは、材木を削(けず)ったときにできる、木くずのことです。
漢字は「杮」です。「柿」に似ていますが異なります。一般的には、「こけら」とひらがなで書かれることが多いです。
昔の民家の屋根の多くは、「こけら板」という薄い削り板で葺(ふ)かれていたため、建物の新築や改装工事の終わりに、板の削りくずを払い落として祝(いわ)う風習がありました。
この「最後の削りくずを落とす」という作業が「建物の完了」を意味することから、新しい劇場の落成や初公演のことを「こけら落とし」と呼ぶようになったとされます。
「ねえママ。こけらって、お金のない人のことだよね」「それは、おけら」
また、こけら板で葺かれた屋根は、決して贅沢(ぜいたく)ではなく粗末な構造だったことから、謙遜(けんそん)の意味を込めて「こけら落とし」というようになったという説もあります。