山の中の高圧送電線はどうやって張る?ヘリコプターと”ラインマン”の驚きの架線技術を徹底解説

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高圧電線 山の中

山の中を見上げると、鉄塔と鉄塔の間に張られた高圧送電線が目に入ることがあります。400~500メートルも離れた鉄塔の間に、一体どうやってあの重い電線を張っているのでしょうか?実は、その裏には「ラインマン」と呼ばれる高所作業のプロフェッショナルと、ヘリコプターを駆使した驚きの技術が隠されています。私たちの暮らしを支える電気を運ぶ送電線工事の知られざる世界を、詳しくご紹介します。

高圧送電線はヘリコプターとラインマンの連携プレーで張られる

山岳地帯に立つ送電鉄塔の間に電線を張る作業は「架線工事」と呼ばれ、ラインマンと呼ばれる架線工事の作業員と、ヘリコプターの高度な連携によって実現されています。鉄塔間の距離は平均で400~500メートル、場所によっては500メートル近くにも及びます。しかも、周辺には樹木が生い茂り、重機の搬入も困難な山岳地帯がほとんどです。

このような過酷な環境で、どのようにして電線を張るのでしょうか?答えは、段階的に太さを変えながら引き替えていく「三段構え」の工法にあります。

なぜ直接電線を運ばないのか?重量の問題と3段階工法

50万ボルト級の高圧送電線は、約3キロメートルの長さで約3トンもの重量があります。これはヘリコプターで直接吊り上げることができない重さです。そこで、まず軽いナイロンロープから始めて、段階的に太いワイヤーロープに引き替え、最後に電線と交換する方法が採用されています。

具体的な手順は以下の通りです。

第1段階:ナイロンロープの設置
ヘリコプターが直径1センチ、長さ3キロメートルほどのナイロンロープを鉄塔間に運び、高さ100メートル以上の鉄塔頂上で待機するラインマンがこれをキャッチして固定します。この作業はわずか3分ほどで完了し、ヘリコプターは次の鉄塔へと移動していきます。

第2段階:メッセンジャー・ワイヤーへの引き替え
固定されたナイロンロープを使って、より強度の高い直径1センチの鉄製メッセンジャー・ワイヤーを引き寄せます。ラインマンはナイロンロープを滑車に乗せ替え、巻き取りながらワイヤーへと置き換えていきます。

第3段階:本番の電線へ
メッセンジャー・ワイヤーを使って、最終的に直径4センチの高圧電線を引き延ばします。電線を送り出す「ドラム場」と巻き取る「エンジン場」を鉄塔間の両端に設置し、強力なウインチで電線を引っ張りながら各鉄塔に吊していきます。

ラインマンの匠の技—1センチ単位の調整が必要な緊線作業

電線を張り終えたら、それで終わりではありません。地上約100メートルの高さで、電線のたるみ具合をセンチ単位で調整する「緊線作業」が必要です。この作業は、電線が適切な張力で保たれ、季節による気温変化や風の影響を受けても安全に機能するように、熟練したラインマンの技術と経験によって行なわれます。

ラインマンは直径わずか3センチメートルの電線にまたがりながら作業を行い、4ヶ月間かけて全区間の架線工事を無事故・無災害で完了させます。まさに命がけの作業であり、高所作業のプロフェッショナルとしての誇りと技術が求められる仕事です。

最新技術—ドローンの活用も始まっている

近年では、ヘリコプターに加えてドローンを使ったロープ延線作業も数多く行なわれるようになっています。ドローンはヘリコプターよりも小回りが利き、コストも抑えられるため、地形や環境に応じて最適な方法が選択されています。

また、人力でロープを引っ張って鉄塔間を歩く伝統的な方法も、地形によっては今でも採用されています。技術の進歩と伝統的な工法が組み合わされ、それぞれの現場に最適な施工方法が選ばれているのです。

日本の送電網を支える膨大な鉄塔ネットワーク

2022年12月現在、中国エリア(中国電力管内)だけでも約8,800キロメートルの送電線を約2万基の鉄塔で支えています。全国規模で見れば、その数はさらに膨大です。

鉄塔の間隔は通常400~500メートルですが、特殊な場所ではさらに長くなります。例えば、関西電力が管理する鳴門海峡をまたぐ送電線は、鉄塔間の距離が1,716メートルにも達します(1995年3月時点)。このような海峡横断箇所では、航行する船舶との離隔確保のため、高さ200メートルを超える超大型鉄塔も建設されています。

見えないところで支える電力インフラの守り人たち

鉄塔や送電線は長い間、風雨、雷、地震などにさらされるため、定期的なパトロールによる点検・メンテナンスが必要です。ヘリコプターによる送電線巡視では、上空から送電線、鉄塔、周辺の安全確保を目的とした飛行作業が行なわれています。

架線工事を担う作業員の多くは、熟練した架線電工の高度な施工技能を持つプロフェッショナルですが、近年は若い世代の就職希望者が少なく、技術・技能の継承が業界共通の課題となっています。

私たちが日常的に使っている電気は、こうした見えないところで命がけで働く人々の技術と努力によって支えられています。山の中に張られた高圧送電線を見かけたら、その裏にある驚くべき技術と、ラインマンたちの勇気ある仕事に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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