【2025年最新】トンネルの照明はなぜ奥に行くほど暗い?驚きの安全設計と最新LED化の真実

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トンネル

車でトンネルに入った瞬間、「あれ?入口はこんなに明るいのに、奥に進むと暗くなってる?」と感じたことはありませんか?実はこれ、照明が故障しているわけでも、電気代を節約しているわけでもありません。ドライバーの安全を守るために緻密に計算された、驚くべき科学的な設計なのです。

この記事では、トンネル照明に隠された安全の秘密から、オレンジ色から白色へと変わった照明の歴史、さらには最新のLED技術まで、知られざるトンネルの世界を徹底解説します。読めば必ず誰かに話したくなる、トンネル照明の奥深い世界へようこそ!

トンネルの照明が入口から奥へ暗くなる驚きの理由

人間の目の「暗順応」を考慮した設計

トンネルの照明が入口付近は明るく、奥に進むにつれて暗くなっているのは、人間の目を徐々に暗さに慣れさせるためという、極めて科学的な理由があります。

人間の目には「暗順応(あんじゅんのう)」という機能があります。これは、明るい場所から急に暗い場所へ移動したとき、瞳孔が開いて少ない光でも物が見えるように調整される現象です。しかし、この調整には時間がかかります。

JAF(日本自動車連盟)の調査データによると、暗順応にかかる時間は若年層(20~30代)で平均8秒、高齢者(70~80代)では平均24秒もかかることが明らかになっていますJAF

時速80kmで走行している車は、1秒間に約22メートルも進みます。つまり、8秒間では約176メートル、24秒間では約528メートルもの距離を視界が不十分な状態で走行することになるのです。この間に前方の障害物や停止車両を発見できなければ、重大事故につながる危険性があります。

段階的に明るさを調整する「入口照明」の技術

そこで考え出されたのが、トンネルの照明を入口・内部・出口の3つのゾーンに分け、それぞれ異なる明るさに設定するという方法です。

**入口照明(入口部)**は、明るい屋外から入ってくるドライバーの目に配慮し、非常に高い照度に設定されています。国土交通省の「道路照明施設設置基準」によれば、入口部の路面輝度は基本照明の1.5倍~2倍に設定されることが推奨されています。国土交通省

そこから奥に進むにつれて徐々に照度を落としていき、**基本照明(内部照明)**では安定した明るさを保ちます。この基本照明は、設計速度に応じて路面輝度が決められており、例えば時速80km以上の高速道路では1.0cd/m²以上の明るさが確保されています。

この段階的な明るさの変化により、ドライバーの目は無理なく暗さに順応でき、トンネル内でも障害物をしっかりと視認できるのです。

トンネル照明の色が変わった理由:オレンジから白へ

白いLEDライトを使用しているトンネル
白いLEDライトを使用しているトンネル
出典:https://cdn-webcartop.com/

かつての主流「ナトリウム灯」とオレンジ色の秘密

トンネルと聞いて、オレンジ色の照明を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?1960年代から長年にわたってトンネル照明の主流だったのが、高圧ナトリウムランプです。

ナトリウムランプがトンネル照明に選ばれた理由は、その優れた特性にありました:

煙の中でも見えやすい:かつては自動車の排ガス規制が緩く、トンネル内は煙が充満していました。オレンジ色の光は、煙や霧の中でも透過性が高く、視認性に優れていました。
消費電力が低い:蛍光灯に比べて省エネ性能が高く、24時間点灯するトンネル照明に最適でした。
長寿命:ナトリウムランプの寿命は約12,000時間と長く、交通規制を伴う交換作業の頻度を減らせました。GAZOO

1999年から始まった「白色化」の波

しかし、1999年頃から状況が変わり始めます。自動車の排ガス規制が強化され、トンネル内の空気環境が大幅に改善されたのです。煙が少なくなったことで、オレンジ色の光源にこだわる必要がなくなりました。

そこで登場したのがHf(高周波点灯)蛍光灯です。蛍光灯は白色の自然な光を発するため、物体の色が正確に見え、標識や前方車両のブレーキランプの識別がしやすくなります。また、技術の進歩により、ナトリウムランプと同等以上の省エネ性能と寿命を実現しました。Web Motor Magazine

現在の主流は「LED照明」

そして2010年代以降、トンネル照明の世界に革命をもたらしたのが**LED(発光ダイオード)**です。

LEDがトンネル照明に採用される理由は圧倒的です:

超長寿命:LEDの寿命は約60,000時間と、ナトリウムランプの約5倍。交換頻度が激減し、交通規制に伴う渋滞や作業コストが大幅に削減されます。
優れた演色性:自然光に近い白色光で、路面や前方の状況を正確に把握できます。
省エネ性能:ナトリウムランプよりもさらに消費電力が少なく、環境にも優しい照明です。
瞬時点灯:ナトリウムランプは点灯まで数分かかりますが、LEDは瞬時に点灯します。
現在では、NEXCO(高速道路会社)をはじめ、全国のトンネルでLED化が急速に進んでいます。2023年時点で、新設トンネルはほぼ100%がLED照明を採用しており、既存トンネルも順次LED化が進められています。

トンネル出口の「ホワイトホール現象」を防ぐ工夫

トンネルの照明設計で重要なのは入口だけではありません。出口付近の照明も、実は非常に重要な役割を果たしています。

眩しさで前方が見えなくなる危険性

暗いトンネルから明るい外へ出た瞬間、強い光で視界が真っ白になり、前を走っていた車が消えたように見える現象を「ホワイトホール現象」や「蒸発現象」と呼びます。GAZOO

この現象は、暗さに順応していた瞳孔が、急激な明るさの変化に対応しきれず、過剰な光が目に入ることで起こります。特に晴天時には、トンネル出口の外の明るさはトンネル内の数百倍にもなるため、一瞬視界を失う危険性があります。

出口照明で「明順応」をサポート

この危険を防ぐため、出口照明では、トンネルの奥から出口に向かって徐々に明るさを増していく設計がなされています。これにより、目が少しずつ明るさに慣れる「明順応(めいじゅんのう)」をスムーズに行えるようにしています。

ちなみに、明順応は暗順応よりも短時間で完了しますが、それでも数秒かかるため、出口照明は安全運転に欠かせない設備なのです。

夜間の飛行機も同じ理由で機内を暗くする

実は、トンネル照明と同じ「暗順応」の原理が、航空機の離着陸時の機内照明にも応用されていることをご存知でしょうか?

夜間に飛行機が離着陸する際、機内が一斉に暗くなるのは、万が一の緊急事態で機外に脱出する際に、乗客の目が暗さに慣れているようにするためです。明るい機内から真っ暗な外へ出ると、視界が効かず避難が遅れる危険があるため、あらかじめ目を暗さに慣れさせておくのです。

このように、「暗順応」という人間の生理現象を考慮した安全設計は、私たちの身近なところで数多く採用されているのです。

まとめ:トンネル照明は科学と技術の結晶

「どこから出てきたニャン?」
突然現れたモグラ猫
出典:https://www.zatsugaku-jiten.net/blog-entry-1654.html

トンネルの照明が入口から奥へ暗くなっているのは、決して偶然ではありません。人間の目の特性である「暗順応」を考慮し、ドライバーが安全かつ快適に走行できるように、長年の研究と技術の蓄積によって生み出された設計なのです。

また、照明の色がオレンジから白へと変わった背景には、環境規制の進展、照明技術の進化、そして何よりも「より安全で快適な運転環境を提供したい」という関係者の努力がありました。

次にトンネルを通るときは、ぜひ照明の明るさや色の変化に注目してみてください。そこには、私たちの安全を守るための見えない工夫が詰まっています。

トンネルを走るときの安全ポイント

昼間でもヘッドライトを必ず点灯する(道路交通法で義務化)
入口では前方車両との車間距離を十分に確保
出口では急な明るさの変化に備え、速度を控えめに
サングラスは事前に外しておく(暗順応の妨げになります)
トンネルの照明一つとっても、そこには深い科学と技術が隠されています。こうした知識を持って運転すれば、より安全で楽しいドライブができるはずです。

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